とある男性社員が人事から勧められて育休を取得し、戻ったら転勤を命じられたという事件がニュースを少し騒がせている。社員が退職を申し出ると有給取得も許可されなかったらしいので、気の毒だ。
個人と社会(組織)の対立は永遠の課題である。海外でも"Individual vs Society"という言葉があるように[1]、世界共通の問題といえよう。例えば別の勤務地に欠員が出たとして、かつ組織が新しい人を雇わない方針ならば、組織の誰かが犠牲にならなければならない。そして組織の一員が組織の方針に従えないのならば(つまり個を優先するならば)、組織を抜けるしかない。
私も転勤族の家に生まれ、今はJapanese Traditional Big(?) Old Companyの一員として働いており、いろいろ思うことはある。社員の生活を無視した配置転換は、共働きが当たり前になりつつある現代にはそぐわないのは間違いない。せめて組織と社員で交渉する機会が設けられていたり、金銭的な報酬の提示があればまた結果は変わったのかもしれない。報復人事だったかどうかはわからないが、おそらく、日本企業にありがちな突然の転勤辞令ではないかと予想している[2]。
先月、経団連の会長が終身雇用は限界だという発言があった。しばらくは移行期として苦しい時期が続くだろうが、こうした事件をきっかけに、日本社会が変わり始めることを祈っている。
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そうこう考えていると、どうして日本企業では転勤が当たり前のものだと思われているのか、という疑問が生まれる。例えば、転勤とは、終身雇用制度で給料に差がつかない世界の中における出世コースだったのだろうか?。 ↩︎